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アトピーがぐんぐん良くなる本

アトピーの権威、丹羽靭負先生の著書から、科学的にアトピーに対処するための情報を一部ご紹介します。

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2006年09月29日

全身の紅斑が10日で消えた

【症例2】 18歳・女性・京都府京都市

◎既往歴

14歳の時に両肘、両膝屈側部に乾燥したかゆみの強い紅斑が発生。
次第に全身に及び、途中4ヶ月間ステロイド(ロコイド)を外用したが、症状回復がなく中止。
皮疹は悪化する一方でした。

◎来院時所見

atopy_2.jpg全身に乾燥肥厚した紅斑が瀰漫性にみられ、特に写真のように膝屈側部や肩〜前胸部に皮疹がひどい。

◎治療経過

atopy_3.jpgSOD様作用食品とルイボスTXを内服させ、全身を低濃度ステロイドSOD作用エキス含有軟膏にグリテールパスターを重ねて塗る。
10日後には一部軽い肥厚を残し、ほぼ皮疹は改善され、含有低濃度ステロイドの濃度を3分の1〜4分の1に減少して軟膏療法を続け、2週間後軽快退院しました。

2006年09月21日

カチカリの肌がスベスベに

【症例1】19歳・男性・愛知県岡崎市

◎既往歴

2歳の頃より、四肢(両腕と両脚)の好発部位(肘、膝の屈曲側)にかゆみのある皮疹(ひしん)。
以来、アトピーに効果があるとされている薬を薬局で購入し塗り続ける。
幼稚園の頃になると、春先から秋口にかけて悪化し、そのつど、ステロイド外用。小学校6年〜中3年の頃は、アトピー性皮膚炎はあまりひどくなく、ステロイドを薄めた軟膏を塗る。
しかし、気管支ぜん息があり、漢方剤中心の療法に変える。
高校になると、アトピー性皮膚炎が春先から秋口にかけて悪化し、そのつどステロイドを外用。
高3の頃になると次第に悪化し、ステロイドを中止し、健康食品、ビタミン剤に頼り、ますます悪化、私の病院(土佐清水病院)へ入院。

◎来院時所見

p_atopy1.jpg写真のように全身が乾燥した肥厚(ひこう)や苔癬化した紅斑に被われ、特に下肢は象のように厚く色素沈着もみられ、全身のかゆみが著しく不眠を訴えました。
正常値は200以下であるところがIgE11、700、白血病数14,000、好酸素39%と異常な高値を示す。

◎治療経過

SOD様作用食品とルイボスTXを内服させ、全身を低濃度ステロイド、SOD作用エキス含有軟膏にグリテールパスターを重ねて塗る。
皮疹は徐々に改善され苔癬化した紅斑も軽減し、約2週間あとにはほぼ皮疹は消え、退院。
現在もAOAエキス等の軟膏を継続的に使用し、退院後1年半経過するが再燃はみられません。

2006年09月13日

アトピーに絶望することはない

この章では、私の病院へ来院され治療を受けられた数千名以上のアトピー性皮膚炎の患者のうちから、超重症の症例、23例を取りあげ、治療経過を報告しようと思います。
これらの患者は、あまりにも症状が重かったために、私の治療法では平均すると一週間程度で症状は回復、ないし完治がのぞめるところ、それ以上の期間を要しています。
しかし、以下の報告を読まれればおわかりになるように、従来のアトピー性皮膚炎は決して絶望的な病気ではないことをさまざまな症例から証明していきたいと思います。
なお、症例の所見及び治療経過,症状については、厳密を期すため専門用語を多用しています。
一般の方にはかなり読みにくいと思われますので、最初に用語の説明と図式で皮膚の異常の種類とその進行過程を示すこととします。
以下の症例をお読みになり、アトピー性皮膚炎に対するしっかりとした認識をもっていただきたいと思います。

●皮膚の異常の種類とアトピーの進行過程

皮疹(ひしん)
 一般的に言われる皮膚に出る“ブツブツ”すべてを言います。

丘疹(きゅうしん)
面積のあまりない点状ないし斑点(はんてん)のような“ブツブツ”が皮膚に出ているものを言います。

紅斑(こうはん)
 赤い斑点が一定の面積をもって皮膚の表面に少し盛り上がった状態で出ること。紅斑の“紅”の字は後述しますように、炎症時赤くなってくるため、盛り上がった皮疹が少し“赤味”をもって紅色を示すことが多いためこう呼びます。

肥厚(ひこう)
 前述の丘疹や紅斑が単独、あるいはお互いに融合(結合)しあって、長期にわたって悪化すると、皮疹が大変厚くなります。その厚くなった状態を言います。

苔癬化(たいせんか)
 皮膚の異常の末期的状態で,肥厚よりさらに皮膚が盛り上がってしまい、まるで象の肌のようにカチカチになった状態。

彌慢性(びまんせい)
 “散在性”の逆で(皮疹)が拡がって広い面積を所有していくことを形容した言葉。

湿潤(しつじゅん)
 皮疹の表面が湿ってじゅくじゅくして崩れそうになってくること。

糜爛(びらん)
 前述の“湿潤”の悪化した状態で、皮膚の表面が崩れてじゅくじゅくになり、傷ついて一部化膿した状態。

潰瘍(かいよう)
 前述の糜爛面がもっと深くなり、皮膚が掘れた状態になること。

瘢痕状(はんこんじょう)
 湿潤、糜爛面の存在した後の改善後にみられるもので、傷跡のようになって皮膚が引っ張られる感じになっている状態。

ケロイド
 傷跡の皮が引っ張られただけでなく、その上に汚く盛り上がった状態になったものを言います。

落屑(らくせつ)
 アトピーがひどくなると、皮膚の表面が崩れるものと、皮がむけ、頭にフケのような粉状のものが表面に浮き出るものとがあります。落屑は後者で頭に出ると“フケ”と呼ばれます。

(けつが)
 皮膚がコケ状になった状態。

浮腫状(ふしゅじょう)
 水っぽく腫れあがること。

発赤(はっせき)
 赤味がある状態。炎症の激しさを表します。

漿液性丘疹(しょうえきせいしっしん)
 丘疹が水っぽい状態。炎症が激しく急性期にあることを示します。

結節性痒疹(けつせつせいようしん)
 虫(例えば“ブヨ”)にかまれたように皮膚の表面が盛り上がり、しかも根が深い状態。

硬結(こうけつ)
 皮疹の根が深い状態。

貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)
 貨幣状に丸くなったじめじめした紅斑のこと。

●皮膚の異常とアトピーの進行過程

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2006年09月04日

はじめに

従来、数ある病気の中ではとかく軽く見られがちだったアトピー性皮膚炎は、ここ十数年数年前から次第にその症状が変化し、患者数の激増、年齢の高齢化をはじめ、学業、勤務への障害など重大な社会問題を投げかけています。

大学病院でステロイド外用を行ったが効果のない全身型アトピー性皮膚炎や、ステロイド外用を嫌い自然回帰に走ったがためかえって症状が悪化するなど、重症の症状を持った状態で私の治療を求めて全国各地から土佐清水病院を訪れる患者さんは、年々増加の一途をたどっています。
あらゆる治療が行われたが、効果がなく非常に重症なために当病院に入院加療した患者さんだけでも、昨年1年間で1000人を超えているのが実情です。

つい数年前までは、このような重症患者さんは、例えば高校生や大学生では激しいかゆみのため極度の不眠で学校を休みがちになり、休学、あるいは退学してしまったとか、サラリーマンではその症状を同僚に見られるのが厭で会社をやめてしまったとか、また年頃の娘さんの場合は汚くなった容姿や皮膚のために、恋愛・結婚を諦め、家に閉じこもってたままになってしまったというケースがよく見受けられました。

平成3、4年度になってからは、さらに事態が進み、具体例を挙げますと、例えば、会社の上司から「会社の勤務(ステンドグラス工房の勤務)が、あなたのアトピー性皮膚炎に悪いのではないか。辞めた方が身のためだよ」と言われ、「考えておきます」と答えると、月末の27日であったにもかかわらず、「今月中に返事を出せ、考える必要もないのではないか」と退職を迫られ退職した例や、また、百貨店の上司からダイレクトに、「醜い皮膚だからお客さんの手前、売り子として不適格である」と言われて、平成5年3月1日に退職。
本年(平成6年)1月土佐清水病院に入院した例。

あるいは、神戸の子供で、ポートアイランドの公園などで遊んでいると、同じ遊んでいる子供の親に「あなたは汚いからうちの子供と遊んでもらったら困る。あっちへ行きなさい」と追い払われたり、神戸労災病院の皮膚科に診察に行くと、同じ待合室の椅子に座っている複数の人々から、「あなたはお化けみたいで気持ち悪いから待合室に入って来るな」と言われ待合室を追い出された例など、深刻な被害・差別が頻繁に起こるようになっているのです。
アトピー性皮膚炎の重症化は、ついに、患者さん個人の悩みの領域を越えて、深刻な社会問題を引き起こすまでに至っています。

一方、この増加・重症化をたどるアトピー性皮膚炎に対する治療方法としては、西洋医学の教育を受けた一般の皮膚科医は、ほとんど例外なく、チューブに入った(チューブに入っていなくてもチューブから容器に入れ替えて)悪名高きステロイドの外用を行うことで皮膚炎を一時的に抑えること以外に対策がないのが現実です。
他方、患者さんの中には、化学薬品の副作用を嫌って自然回帰に熱中し、漢方剤に温泉療法に、あるいは何らかの科学的治療メカニズムの証明されていない、ただ単に高価なだけの健康食品の類に救いを求めて奔走される方も少なくありません。

ステロイド外用を行ったが効果がなかったほどの重症の患者さんが、このような方法で効果を期待できるはずもなく、全身悲惨この上もないような皮膚になって病院を訪れる気の毒な患者さんも非常に多いのです。
私は、過去30年間、アトピー性皮膚炎の治療に携わり、アトピー患者の病態の変化を深く観察し、何千否何万の気の毒な患者さんの治療経験を経て、幾多の試練を克服して、可能な限り副作用のない軟膏の開発に取り組み、かつ私の20年間の生化学の研究所での活性酸素や過酸化脂質“super oxide dismutase(SOD)”(後述)の研究生活を通して、この重症化したアトピー性皮膚炎の原因の究明に努めた結果、やっとここ数年その結論が得られるようになりました。
そして、その原因究明の詳細や新しい治療方針などが、平成5年日本皮膚科学会の機関誌(日皮会誌、103巻、2号、117〜126頁)に掲載された他、国際医学雑誌の中で皮膚科の臨床分野でのベストジャーナルの誉高い[Archives of Dermatologyに正式に認知され、今春(平成6年)に掲載・出版される運びとなりました。

今回皆様に送るこのアトピーの書は、机上の空論では決してありません。
先述の国際医学雑誌の審査員はアメリカで非常に有名なアトピー性皮膚炎の世界的権威の大学教授ですが、私のこの論文に対して、“very intriguing study”(たいへん示唆に富んだ研究)と賛辞を惜しまず、私に向かって次のように述べられました。
「アメリカでも欧州でもアトピー性皮膚炎の重症化が問題になっているが、貴方のように明確な生化学のデータを出した科学的根拠に基づく研究発表は世界最初で非常に貴重であり、我々の頭を悩ましているアトピー性皮膚炎に対する問題点を解決するのに重要な指針を与えてくれた」。

このようにして国際学会誌で発表されることにより、アトピー性皮膚炎についての私の新しい学説は国際的にも正式に認められたものとなったのです。
一見救う道がないかのように見られる現代の奇病=アトピー性皮膚炎に対して、私の30年以上に及ぶ臨床経験と20年間の生化学の研究の成果を踏まえた科学的根拠に基づく現状分析とその原因の解明を行い、科学的に正しい視野のもとに(偏向的な反公害運動にくみすることなく)、全国で悩まれている軽症のアトピー患者はもとより、何万何十万の不幸な重症アトピー患者の方々に、この激増・重症化していくアトピー性皮膚炎の実態を紹介し、悩める多くの患者さん達が勇気を出して根気強く病魔と闘いながら各自の社会生活を歩み、自らに与えられた使命をまっとうされるための一助に本書がならんことを祈って筆を執る次第です。

1994年 4月 丹羽靭負(耕三)